AIはさまざまな業界で変革を起こし、人間の働き方や生き方を根底から変える可能性を秘めています。しかし、人工知能は影響が及ぶ範囲がきわめて広いため、AIテクノロジーの開発、展開、利用が倫理基準、透明性、アカウンタビリティ、公平性に沿っていることを確認するために、効果的なガバナンスの実践が求められます。AIシステムの倫理的、法的、社会的影響に対応するためには、AIガバナンスが不可欠です。本稿は、AIガバナンスとは何か、なぜ必要なのかを説明し、AIエコシステムの責任ある使用を促進するための基本原則と戦略について解説します。
AIガバナンスとは
人工知能(AI)ガバナンスとは、バイアスによる潜在的リスクを最小化し、意図したメリットを最大化するような方法でAIテクノロジーが開発および使用されることを保証するガードレールとしての役割を果たすフレームワーク、ポリシー、ベストプラクティスの集合体です。AIガバナンスは、AIアルゴリズム、意思決定、データプライバシーとセキュリティ、そしてAIテクノロジーの使用に伴う経済的および社会的な潜在的インパクトに対応します。
AIガバナンスが必要である理由
AIを組織や社会に役立てるためには、ガバナンスが不可欠です。AIガバナンスを優先事項とすべき理由を4つ挙げます。
倫理とモラルに関する考慮の尊重
AIシステムは非常に大きな社会的影響をもたらす可能性があります。たとえば、AI搭載ツールによる決定にバイアスがかかり、特定の個人やコミュニティに不公平な不利益をもたらす可能性があります。AIガバナンスによりアカウンタビリティの基準が導入されることで、こうしたシステムから生じる可能性のある社会的影響を考慮することが組織に要求されます。また、システムが公平で透明性のある方法で実装され、人間の価値観に沿っており、個人の権利を尊重していることも確認する必要があります。
法順守と規制コンプライアンス
AI固有の規制は、世界中の政府にとって急速に焦点になりつつあります。規制環境が発展するなかで、AIガバナンスのベストプラクティスは、AIテクノロジーが既存の法規制に従った形で開発および使用されることを保証します。データセキュリティとプライバシーに関して、AIガバナンスの基準は、個人データの保護やデータセキュリティおよびプライバシー関連法のコンプライアンス確保のために不可欠です。
リスク管理
AIテクノロジーの使用は、多くのリスクと課題をもたらしています。たとえば、信頼喪失、AIへの過剰依存による価値あるスキルの崩壊、意思決定プロセスへの有害なバイアスの混入などです。AIガバナンスプラクティスは、これらをはじめとするリスクの特定と管理を遂行するためのフレームワークを提供します。
信頼の維持
AIアルゴリズムはときに不透明で、ビジネスリーダーや他のステークホルダーにとって、意思決定プロセスを理解するうえで重大な課題となります。AIガバナンスは透明性と説明可能性を支え、自社AIシステムに関する詳細情報を提供することを組織に求めます。これには、AI支援の意思決定に使用されたデータソースやアルゴリズムが含まれます。自社のAIシステムがどのように機能するのか詳細な説明を提供することで、組織は従業員、顧客、コミュニティのステークホルダーからの信頼を勝ち取り、その信頼をさらに大きく維持することができます。
AIガバナンスのベストプラクティス
AIガバナンスのベストプラクティスは、組織内におけるAIシステムの責任ある効果的な導入の指針となります。AIガバナンスの基本的なベストプラクティスは次の5つです。
内部ガバナンス構造の構築
AIガバナンスの成功は、堅牢な内部ガバナンスメカニズムに依存します。AIエキスパート、ビジネスリーダー、主要ステークホルダーからワーキンググループを構成すると、専門知識、重点課題、アカウンタビリティを提供して、社内でのAIの利用に関するポリシーを策定する作業を支援できます。内部ガバナンス構造により、AIシステムのビジネスユースケースの定義、ロールと責務の割り当て、アカウンタビリティの強化、成果の評価など、さまざまなガバナンス目標を達成できます。
ステークホルダーのエンゲージメント
透明性のあるコミュニケーションは、AIの開発と使用にかかわるすべてのグループにとって不可欠です。ここでステークホルダーとなるのは、従業員、エンドユーザー、投資家、コミュニティメンバーなどです。AIの仕組み、使用方法、予想されるメリットとデメリットを各ステークホルダーグループに説明することにより、組織は透明性を促進し、最も影響を受ける可能性のある人々との間に信頼を培うことができます。ステークホルダーのエンゲージメントについて公式ポリシーを策定することにより、コミュニケーションのあり方を定められます。
AIが人間に与える影響の評価
適切なガバナンスを適用したAIシステムは、個人のプライバシーと自律を尊重し、特定の集団に不公平な不利益をもたらす差別を回避します。対応を必要とするリスクには、低品質なトレーニングデータの使用、開発チームにおける多様性の欠如、バイアスにつながるデータサンプリング手法が含まれます。リスク管理戦略により、モデルが責任ある方法で使用されていることを確認できます。
AIモデルの管理
AIモデルは時間の経過とともに劣化する可能性があります。組織は継続的モニタリング、モデルのリフレッシュ、継続的テストを実施してモデルのドリフトに対する保護を講じ、システムが意図したパフォーマンスを発揮していることを確認する必要があります。
データガバナンスとセキュリティの対応
現代のビジネスは、AIを含むさまざまな目的のために消費者の機密データを頻繁に収集して使用しています。このデータには、オンライン購入パターン、ソーシャルメディアでのアクティビティ、位置情報、詳細な人口統計データなどが含まれます。AIガバナンスのコンテキストでは、堅牢なデータセキュリティとガバナンスの基準を実装することでAIシステムの成果の質が確保され、関連するデータセキュリティおよびプライバシー規制が確実に尊重されます。AI固有のデータガバナンスポリシーとセキュリティポリシーを策定することで、組織は消費者の機密データが侵害または不正使用される可能性を抑えています。
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Snowflakeのプラットフォームは最初からクラウド向けに構築されており、機械学習とAIドリブンなデータサイエンスアプリケーションをサポートします。現在利用できる最も高度なクラウドセキュリティテクノロジーを活用したSnowflakeデータクラウドは、セキュリティとレジリエンスに優れ、データガバナンスとセキュリティに関するAIガバナンスのベストプラクティスをすべて取り入れています。Snowflakeは、業界をリードする機能を備えており、アカウントとユーザー、およびSnowflakeでユーザーが保存およびアクセスするすべてのデータに対して、最高レベルのガバナンスを確保できます。Snowflakeのさまざまな機能について、ぜひご自身でお確かめください。Snowflakeのご試用は、無料トライアルの登録からお申し込みいただけます。
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