
カスタマーストーリー
Streamlitで開発したWebアプリ群で ビジネスのスピード感に対応 全社的なデータ利活用が ドコモ経済圏の顧客体験向上に貢献する
1億人を超えるdポイント会員の行動データ分析を可能にしたSnowflakeのデータ基盤と分析アプリStreamlit、携帯キャリア各社の「経済圏」争いを勝ち抜くための戦略と展望とは。
KEY RESULTS:
3800
時間削減 SnowCamp in docomoで開発された24のアプリが生産性を改善
60
2024年8月時点で60のStreamlitアプリが稼働中


業種
Telecom所在地
東京都千代田区ビジネス部門のデータ分析ニーズにスピード感をもって応えるStreamlitアプリ
Snowflakeのデータ基盤に蓄積される1億人を超えるdポイント会員の属 性データ、行動データ活用は、携帯キャリア各社の「経済圏」間の争いを勝 ち抜く上で大きな意味を持つ。データ基盤の全社的活用を主なミッション にするデータプラットフォーム部にとって大きな課題になっていたのは、ビ ジネス部門のデータ分析ニーズに応えるリードタイムの長さだった。エンジ ニアによるデータ分析リードタイム短縮に加え、ビジネス部門によるデータ 加工セルフ化にも大きな役割を果たしたStreamlitアプリは、同部が目指す データ民主化に向けた大きな一歩になっている。
Story Highlights
- エンジニアがUIまで手掛けることで生産性を向上
- 独自研修プログラムで開発未経験者のデータ加工を支援
- 認知度向上を目的にStreamlitアプリ社内コンペを開催
dポイント会員の行動データ分析が ドコモ経済圏強化のカギ
近年、モバイルキャリア各社は通信サービスに限らず、決済サービス、E コマースなど多様なサービスを幅広く提供するようになっている。その背 景にあるのが、独自のポイント還元や割引を軸にした「経済圏」による顧客囲い込みを巡る争いだ。従業員数4万7000名、回線契約数9000万人の国内最大のモバイル通信 事業者であるNTTドコモが自社の経済圏を強化する上で大きな意味を持つのが、1億人を超えるdポイント会員の属性データや行動データの存在で ある。データ基盤の全社的な利活用を主要なミッションとするデータプラッ トフォーム部 部長の鈴木 敬氏はその意義をこう説明する。「dポイントはドコモのサービスを利用したり、d払い加盟店で買い物を することでポイントが貯まるサービスです。お客様一人ひとりの趣味や関心、行動を把握し、その価値を最大化する取り組みは会員基盤の拡大に貢献しますが、それは加盟店のメリットに直結します。それにより加盟店が増えることは会員のメリットにつながる。こうしたポジティブなサイクルを確実に回していく上で、データ利活用による顧客体験の最適化は極めて大 きな意味を持つと考えています」 同社のデータ利活用は、マーケティング分野に留まらない。経営指標のモニタリング、事業戦略の作成、サービスのモニタリングなど、多様な目的にデータが利活用されている。当初、オンプレミスにデータ基盤を構築し て運用してきた同社にとって最も大きな問題になったのが、必要に応じてコンピューティングリソースを柔軟に変更することが難しい点だった。その結果、必要に応じたタイムリーなデータ分析ができないなどの問題が生じていたという。こうした課題を解決する新たなデータ基盤として、同社が採 用したのがSnowflakeだった。
「Snowflakeを選んだ第一の理由はスケーラビリティが確保で きる点です。またエコシステムが充実し、さまざまな機能が日々 追加される点も大きな魅力でした」(鈴木氏)
Streamlitでリードタイムを短縮、データ利活用セルフ化を支援
データプラットフォーム部は、NTTドコモのデータ利活用のあるべき姿を 「スピード」「インサイト」「スケール」という3つの言葉で説明する。それが意味するものをデータプラットフォーム部 担当課長の吉田 祥平氏はこう説明する。
「市場環境の変化が加速する中、ビジネスサイドのニーズに応じて迅速にデータが分析できることは非常に重要です。また分析結果をサービスに フィードバックする上では、より深いインサイトが求められます。最後のスケールとは、実際にデータ基盤を利活用する人の規模感を指します。私た ちが考える、NTTドコモのデータ利活用のあるべき姿を実現する上で、この 3つの課題解決を通し、誰もがデータにアクセスできる環境の実現が重要と考えています」
その一方で以前から大きな問題になってきたのが、新たなデータ分析 ニーズに関するリードタイムの長さだった。その解決のため、同社が注目し たのは、2023年3月にSnowflakeが買収したオープンソースのPythonライブラリ「Streamlit」によるアプリ開発だった。
「データ分析ニーズへの対応はこれまで、フロント担当者がビジネス部門から説明を受けた上でデータサイエンティストがデー タ加工を行い、BIツールへの実装はさらに別のエンジニアが行 うという非常に手間が掛かるものでした。こうした中、私たちが 注目したのは、アプリUIがPythonで作成できるStreamlitでした。Streamlitにより、データサイエンティストがビジネス部門 との打ち合わせからUI作成まで一気通貫で行えるようになった ことは、リードタイム短縮化や生産性の向上に大きな役割を果 たしています」(吉田氏)
Streamlitアプリはロジックを公開することで、パラメータ変更による再利用が可能になる。その点も吉田氏が注目したポイントの一つだったとい う。さらに同社は、独自研修プログラム開発を通し、プログラム開発未経験のビジネス部門ユーザーが自分たちでデータ分析を行える環境整備にも積極的に取り組んでいる。10日間の研修の後に8日間でMVPアプリを開発し、その後も継続的なアプリ改善に取り組むというプログラムの意義を吉田氏はこう説明する。
「スピード感にしてもインサイトの深化にしても、やはりビジネスにより 近い場所で開発を行うことが大きな意味を持ちます。当初はStreamlitで開発が行えるのは私のチームの14名だけでしたが、開発者は265名に増え、110名を超える社員が継続的に開発を行っています」
優れたアイデアの即座の対応で業務を大幅に省力化
同社は、Streamlitアプリの認知度向上や全社的な活用促進を図るべくSnowflakeと共催のもと、アプリ開発の社内コンテスト「SnowCamp in docomo」を2023年11月から翌1月にかけて開催した。アプリの企画・開発から業務適用、効果測定までを行う同イベントでは約70のアプリ開発のアイデアが生まれ、そのうち24のアイデアがアプリ開発に進み、1カ月間のビジネス活用期間を経て、最終的に7名のファイナリストのプレゼンテーションが行われた。吉田氏はイベントの意義をこう振り返る。「Streamlit創業者のアマンダ・ケリーさんにも参加いただいたイベントで最優秀賞に輝いたのは、d払いの利用状況をヒートマップで可視化するアプリでした。あまり利用されていないエリアの問題点を社員が実際に足を運んで調査したり、逆に利用頻度が高いエリアについては新規加盟店の開拓にもそのデータが活用されるなど、ビジネス部門でもこのアプリは有効活用されています」イベントを通して開発された24個のアプリの業務削減に関する効果は、その後の効果検証によると3800時間/月に及び、Streamlitアプリの開発者は265人に増えているという。Streamlitの意義を、吉田氏はこうまとめる。
「まず挙げられるのは、複雑な分析処理をシンプルなUIで提供できるようになった点です。それはビジネス部門によるセルフ分析にもつながっています。二つ目がデータサイエンティストがUI開発まで行うことにより生産性の向上です。そして最後がサイロ化していたデータ利活用の標準化に関する効果です。Streamlitアプリにより支社ごと、人ごとに独自になってしまっていた業務プロセスが標準化され、全社で同じ数字を見れるようになってきています」
マーケットプレイスによる社外展開とAIの活用がこれからの課題
今後のStreamlit活用について、同社は大きく二方向の展開を考えているとのこと。一つは社外とのStreamlitアプリ共有だと吉田氏は説明する。
「将来的には、d払い、dポイント加盟店の皆様やNTTグループ各社、ビジネスパートナーの方々とStreamlitアプリを共有することで、企業の枠組みを超えたデータ利活用を推進したいと考えています。こうした観点からは、セキュアなデータ共有が可能になるSnowflakeマーケットプレイスも今後は積極的に活用していきたいと考えています」
さらにSnowflakeのデータクリーンルームを介した自社外のデータ利活用にもStreamlitアプリを活用することを検討中という。もう一つの方向性が、生成AIとの連携である。
「当社では、要約、コンテンツ生成、RAGによるLLM回答精度向上、コード生成などの分野で生成AI活用の取り組みを開始していますが、Streamlitと生成AIの相性はとても良いと感じています。特に自然生成によるコード生成は、Streamlitによるデータ利活用をさらに一歩先に進めるものになるのではないかと期待しています」(吉田氏)
同社はStreamlitと生成AIの組み合わせによる魔法のような利用体験により、ドコモ経済圏に新たな価値を創造したいと考えている。

「当社では、要約、コンテンツ生成、RAGによるLLM回答精度向上、コード生成などの分野で生成AI活用の取り組みを開始していますが、Streamlitと生成AIの相性はとても良いと感じています。特に自然生成によるコード生成は、Streamlitによるデータ利活用をさらに一歩先に進めるものになるのではないかと期待しています」
吉田 祥平氏
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