金融サービス

金融サービス業界におけるコンポーザブルCDP:マーケターのエンパワメントとコンプライアンスリスクの低減を実現

Photo illustration of a male using a cell phone and a laptop, with overlays of chart graphics

金融サービス企業のマーケターは、非常に多くの仕事を抱えています。社内には豊富なデータがありますが、そのデータはさまざまなシステムや部門にわたって断片化されていることが多く、保護クラスのデータにはさまざまな製品ラインでの利用に幅広い制限があります。

金融業界で最も効果的な企業の一部は、ファーストパーティデータをSnowflakeの金融業界向けAIデータクラウドに一元化することにより、長期的な成功に向けた戦略を準備しています。そして、マーケターがこうしたデータに基づいてアクションを実行できるように、企業がマーケターのエンパワメントを実現するための方法の一つとして、コンポーザブル顧客データプラットフォーム(CDP)があります。コンポーザブルCDPは、データを管理し、使用できるデータへのマーケターのアクセスを制限できるため、コンプライアンスリスクが軽減されると同時に、マーケターは信頼性の高いデータにより迅速かつ確実に行動できるようになります。 

このブログ記事では、コンポーザブルCDPの仕組みについて、またCDPがどのように金融サービス業界のマーケターのエンパワメントを実現してデータとAIのフル活用を可能にし、パフォーマンスの改善をもたらすかについて説明します。 

コンポーザブルCDPがAIデータクラウド上でどのように機能するか

Snowflakeは、トランザクション処理システム、顧客関係管理プラットフォーム(CRM)、データマートなどのビジネスデータを一元化し、管理するための最適な場所の一つです。コンポーザブルCDPは、Snowflake AIデータクラウド内でこうしたデータを、マーケティング、セールス、広告、オペレーションを強化するためのアクションに変えられるようにします。マーケターは、自身のユースケースと既存のテクノロジーに基づいて、自社のAIデータクラウドに含めるCDP機能を選択できます。

  • データアクティベーション:オーディエンスを構築し、顧客とその属性をEメール、メッセージングプラットフォーム、CRM、広告プラットフォーム、Slackなどの運用ツールや、その他のビジネスを強化する最終的な対象に同期します。 

  • AI意思決定:顧客一人ひとりのアクションを促す最適なメッセージを見つけるために、継続的に実験を行います。履歴データと顧客インタラクションに基づいて、メッセージ、チャネル、ジャーニーを自動的にパーソナライズします。 

  • キャンペーンインテリジェンス:複数のチャネルとプラットフォームにまたがってマーケティングキャンペーンを分析します。セルフサービスのダッシュボードから直接新しいオーディエンスセグメントを作成することで、インサイトをアクションに変えます。 

  • イベント追跡:自社のウェブサイトやモバイルアプリからユーザーの行動を収集し、そうしたアクションをAIデータクラウドに直接保存します。

  • ID解決:顧客、世帯、または自社のビジネスにとって重要となるエンティティについて、データを統合して360度のプロファイルにします。

The Composable CDP brings powerful capabilities to the data securely stored in the AI Data Cloud.
図1:コンポーザブルCDPは、AIデータクラウドにセキュアに保存されたデータに強力な機能をもたらします。

このアーキテクチャを詳しく見たときにわかる重要なポイントは、コンポーザブルCDPはバンドルされておらず、モジュール化されていることです。つまり、自社の特定のユースケースやニーズに合わせて、テクノロジースタックにどの機能を追加するかを選択できます。どの機能が必要な場合でも、コンポーザブルCDPの役割は、ビジネスチームのエンパワメントを実現し、チームがAIデータクラウド内の顧客データを利用してインパクトのある体験を提供できるようにすることです。

金融サービス業界に特化したコンポーザブルCDPがなぜ必要なのか

コンポーザブルCDPは、データの収集、統合、アクティベーションをすべてSnowflake内から実行できます。対照的に、AIデータクラウドと連携していないサイロ化したCDPでは、システム間でデータをコピーする必要が生じます。

Siloed CDPs operate separately from the AI Data Cloud. Composable CDPs operate directly within the AI Data Cloud, working directly in your source of truth.
図2:サイロ化されたCDPは、AIデータクラウドとは別に運用されます。コンポーザブルCDPは、AIデータクラウド内で直接運用され、自社の信頼できる情報源で直接動作します。

AIデータクラウドの中心にCDPを配置することは、金融サービス企業にとっていくつかの重要なメリットをもたらします。

マーケターは厳格なガバナンスの下で倫理的にデータを使用できるようになる。多くの金融商品には、マーケティングにおける年齢や性別などの「保護クラス」データの使用制限についての追加規制があります。コンポーザブルCDPでは、Snowflakeの組み込みのガバナンスの力を活用してすべてのデータの使用を簡単に管理できます。マーケターは自分がアクセスできるデータは自社によって許可されていると認識できるため、自由なアクションが可能になります。 

  • Snowflake Horizonは、Hightouchによるマーケティングキャンペーンのアクティベーションなどのユースケースに向けて、Snowflake内に保存されたすべてのデータのデータセキュリティ、コンプライアンス、プライバシー管理のための組み込みのフレームワークを提供しています。

  • コンポーザブルCDPには、データストレージは必要ありません。ブランドがオーディエンスの構築、スプリットテストの分析、ジャーニーのオーケストレーションなどを行う場合、それらのデータと分析はすべて、ガバナンスの確保されたAIデータクラウド内で実施できます。 

  • コンポーザブルCDPは、マーケターのワークフローを管理するガバナンスプロセスの合理化をサポートします。これには、さまざまなユーザーグループのグローバルデータアクセス制御の継承、どのマーケティングや業務の宛先にどのデータタイプを送信するかについてのルール、保護クラスのPIIや各ユーザーのマーケティングメッセージへのオプトイン同意のステータスなどのフィーチャーに基づいたデータ使用フィルターなどがあります。

独自のスキーマの使用が可能になる。大手金融機関は、独自のスキーマやセマンティックレイヤーを持つ、堅牢な既存データセットを保有しています。たとえば、個人の与信枠や投資口座などの商品タイプによって、またはパーソナルアドバイザーやオンラインバンキングとの顧客関係に基づいて、データはさまざまに異なる場合があります。AIデータクラウドと統合されていないSaaSツールは、シンプルな「ユーザー」データモデルと「イベント」データモデルでのみ機能する、柔軟性に欠けるデータモデルである場合が少なくありませんが、コンポーザブルCDPでは、Snowflake内のすでに編成されたデータを自由に活用できるため、製品ラインや会社固有のエンティティにまたがる迅速なアクションが可能になります。

すべてのデータを活用できる。金融機関は、多くのトランザクション処理システム、CRM、データマートなどのデータを収集、管理しています。大規模な組織では、各部門に関連するデータのサイロで運用される、冗長なSaaSツールや複数のCDPを購入する場合があります。これに対し、AIデータクラウドでは、サポート対象リージョンのすべての金融サービスデータを一元化できます。マーケターは、データのサイロで業務を行うのではなく、AIデータクラウド内で、コンポーザブルCDPを使用してオーディエンスを構築し、自社の信頼できる情報源から直接結果を分析できます。 

ネイティブな機械学習(ML)と人工知能(AI)を活用できる。金融サービス企業のデータチームは、多くの場合、堅牢なMLおよびAIモデルを社内で構築します。こうしたモデルは、Snowflake Cortex AIを迅速に採用することでさらに大きなインパクトを発揮します。マーケターは、コンポーザブルCDPを使用してモデルのアウトプットをアクションに変えることができ、予測された顧客の行動や傾向などに基づいてキャンペーンのオーディエンスを構築できます。コンポーザブルCDPは、データをコピーすることなくAIデータクラウドで運用できるHightouchのSnowflakeネイティブのAI Decisioning(AI意思決定)など、独自のAI機能を備えている場合があります。これにより、マーケターは目標の定義、戦略的ガードレールの設定、AIを活用した顧客キャンペーンの最適化とパーソナライゼーションの自動化を行えるようになります。そして同時に、インパクトを最大化するための継続的な実験と最適化も実施できます。

証明ポイント:コンポーザブルCDPで成果を加速している金融サービス企業

Chime

事業内容:Chimeは、基本的な銀行サービスは有益、簡単かつ無料であるべきだということを前提として設立された金融テクノロジー企業です。2012年に設立されたChimeは、給料に依存して生活している、80%の米国人にサービスを提供しており、毎月のサービス料、当座貸越手数料、最低残高要件なしで、次の給料日までのやりくりを支援し、クレジットの再構築を可能にするための製品体験を提供しています。

マーケティングターゲット:オンラインバンキング、クレジットカード、普通預金口座などの市場の個人消費者。 

コンポーザブルCDPの活用方法:AIデータクラウドでオーディエンスを構築し、有料メディアプラットフォームと自動的に同期してリターゲティングと抑制の両方を実行しています。 

成果:Chimeはパフォーマンスマーケティングのマッチ率を20%向上させ、マーケターは20分以内に新しいキャンペーンを作成してすべての有料メディアチャネルに展開できるようになりました(2023年8月時点)。

ソース

Ramp

事業内容:Rampは、企業が時間と費用を削減できるよう設計された、最初で唯一の財務自動化プラットフォームおよびコーポレートカードです。Rampは、NetSuiteやQuickBooksなど、1,000件以上の金融商品と統合されており、法人チャージカードの発行、請求書の支払い、会計処理の自動化、経費の監視を簡単に行えるようにします。

マーケティングターゲット:他社の経理チーム。

コンポーザブルCDPの活用方法:自動化されたEメール送信と有料メディアキャンペーンのABテストにより、データドリブンなマーケティングを強化しています。また、RampはコンポーザブルCDPを使用して主要なイベントのSlack通知のトリガーやSalesforceとHubSpotのレコードの更新を行うことで、チーム間でのデータの整合を維持しています。

成果:AIデータクラウドに移行したことで、Rampのデータプラットフォームのコストが20%削減され、データ変換のスピードが33%向上しました。コンポーザブルCDPを活用したパーソナライゼーションが、Rampの販売パイプラインの25%に貢献するようになりました(2022年12月時点)。 

ソース

AIデータクラウドでマーケティングの強化を実現

最終的には、コンポーザブルCDPにより、マーケターはSnowflakeのすべての企業データにセルフサービスでアクセスできるようになります。彼らは自社によって自動的にフィルタリングと管理が行われている、信頼できる情報源のデータを使用しているため、自信を持ってアクションを実行できます。完全なデータにアクセスでき、AIとMLをフル活用してキャンペーンを最適化できるため、よりよい成果を得られるようになります。

詳細については、Snowflakeの金融サービス業界向けAIデータクラウドをご確認ください。また、Snowflakeのクイックスタート「Marketing Orchestration and Campaign Intelligence with Hightouch and Snowflake」もぜひお試しください。

Photo illustration of digital numbers and a performance bar chart overlaid on a skyscraper image.
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